近年、酸化物などの無機系の機能性材料を耐熱性に劣る有機系材料の基板上へ成膜する場合も多くあり、薄膜構造制御の重要なパラメータの一つである基板温度を事実上動かすことができない状況も多くなっています。我々は様々な機能発現に薄膜構造制御(結晶or非結晶)を必要とする金属化合物体を、熱エネルギーに変わる薄膜構造制御のための新たなエネルギーを利用した薄膜作製技術を開発しました。
我々が開発した金属酸化膜の高速低温結晶化成膜法は併用式スパッタリング法の1つであるRAS(Radical Assisted Sputtering)法を応用し、アモルファス表面(金属酸化膜)上に原子状酸素(ラジカル)励起を利用した核形成のステップとその核形成層の上に通常のRAS法を用いて低温下(100℃以下)で結晶性を有する金属酸化膜を堆積させる2段階ステップの成膜手法を特徴としています。現在までに様々な金属酸化膜のスパッタ薄膜構造とラジカルの化学アニーリング効果との関係を定量的に調査し、ラジカルの化学アニーリング効果に有効な薄膜構造の確立とその制御因子の抽出を行うことで、高速(金属Rateと同等)低温(100℃以下)条件下で成長界面領域から高い結晶性を有するTiO2薄膜の形成が可能であり、光触媒特性の結果からその有効性を立証しました。
TiO2光触媒薄膜への応用
全固体型エレクトロクロミックディスプレーへの応用
IGZOへの応用
野口 大輔(のぐち だいすけ)researchmap
都城工業高等専門学校・物質工学科・教授
スパッタリング法による機能性無機薄膜の作製と物性評価および新規成膜手法の開発を行っています。ご興味をお持ちの企業の技術相談や、共同研究等をご検討の際には、気軽にご連絡ください。
表面加工処理
スパッタリング法
機能性薄膜
高速低温成膜
発明の名称:光触媒多層金属化合物薄膜及びその作成方法. 発明人:野口大輔, 河野慶彦, 清文博. 特許番号:5217023.