
平成29年5月2日(火)、奈良高専マルチメディア演習室において、奈良交通株式会社 経営戦略室 課長 西本 敬行様を講師にお招きして、「企業が抱える課題~奈良交通の場合~」と題して、専攻科1年生「システム設計論Ⅰ」(担当教員:上野 秀剛准教授)を対象にご講演いただきました。

(担当教員:上野 秀剛准教授)
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(奈良交通株式会社 経営戦略室 課長 西本 敬行様)
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奈良交通株式会社様は、快適・便利なバス交通アクセスをモットーに奈良県の路線バス事業を担う有力企業として本校の地方創生推進事業(COC+)へ事業協働機関として参画いただいており、現在、交通インフラ情報の共有・統合方式の開発について本校の地域共創研究スマートシティークラスターでの連携を推し進めております。
この地方創生推進事業(COC+)の一環として、奈良交通株式会社様から企業が抱える実際の課題を数ある事業の中から路線バス事業に特化した内容でご提供していただき、学生は「バス利用の便利化について」学習いたします。そして、工学的な観点から「要求仕様書」、「システム設計書」、「テスト仕様書」の3つのドキュメントを作成し、課題解決をはかり、技術者として開発計画を立案する能力を身につけることを目標として、全15週にわたって授業が行われます。
はじめに、会社概要として「日本一長い路線バスで有名な八木新宮線」の運行など乗合バス事業の紹介や「シーカくんのパン屋さん」などの飲食事業を例に、主要事業の自動車事業と生活創造事業等について説明がありました。
つぎに、IT活用が業務に不可欠になった現在、重要性が増している情報システムについて、現在稼働している「主な業務システム」や「情報システム担当の業務」について紹介されました。その中で「サーバおよびパソコン台数の推移」を1995年から2017年までの増加を示した表をもとに説明され、その増加に対して情報システム担当者は1995年当初から5名のままであることをあげられ、人手不足の現状を「情報システムの課題」としてお話しされました。
さらに、「最近の大きな投資案件」や「プロジェクト体制」などの現状を学生に伝え、「バス事業を取り巻く環境」を5つあげられ、そこから導き出される「乗合バスの負のスパイラル」について述べられ、「奈良交通の課題」としてお話しされました。
バス事業を取り巻く環境 |
・沿線人口減少(少子高齢化)
・マイカーの増加による渋滞→バスの定時性喪失
・過疎化の進行による人口減
・住宅開発の鈍化
・コスト削減の限界(安全と環境への投資)
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最後に、「運送収入、輸送人員の推移」や「インバウンド需要の増加」による乗合バスの現状などについてお話しいただきました。そして、「バス利用の便利化」について、課題を工学的な観点でとらえ、ICTを活用することで、路線バスの利用を促進できるような仕組みによる「バス利用の便利化ソリューションの提案をしてほしい」という要望を述べられ、学生による「要求仕様書」、「システム設計書」、「テスト仕様書」の作成に対し、熱い期待を寄せられました。
そのヒントとして、「バス利用の便利化ソリューションのターゲット」を外国人観光客などの①から④で示し、外国人観光客には「極端にシンプルでわかりやすい仕組み」や地域住民(奈良県民)でときどきバスに乗る人・バス路線があるのに乗らない人には「バスロケーションシステムの導入」などを例にあげられ、色々な人・ターゲットの立場に立ったドキュメントの作成を求められました。
バス利用の便利化ソリューションのターゲット |
ターゲット① 外国人観光客
ターゲット② 国内観光客もしくは仕事で県外から奈良に来た人
ターゲット③ 地域住民(奈良県民)でときどきバスに乗る人
ターゲット④ 地域住民(奈良県民)でバス路線があるのに乗らない人
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今後、この授業では、実際のシステム開発に求められている上流工程に対する理解について、学生が6~7人で1グループを組み、演習を通じて「要求仕様書」、「システム設計書」、「テスト仕様書」の3つのドキュメントを作成し、各グループが相互にレビューを行い改善する授業を実施してまいります。そして、全ドキュメントを使ったシステムの説明・提案がレビュー会・最終発表会として行われる予定です。学生が、技術者として開発計画を立案する能力を身に付けることに、大きな期待が寄せられています。
講義終了後、西本 敬行課長に学生から直接質問があり、それに応答する場面も見られ、学生の奈良交通株式会社様に対する関心の高さが感じられました。
本校は、今後も奈良交通株式会社様との連携を深めていき、奈良県の快適・便利な生活環境を築くとともに、地域経済の活性化をはかり、地方創生に邁進してまいります。

奈良交通株式会社様をお招きして「システム設計論Ⅰ」(担当教員:上野 秀剛准教授)における最終発表会が行われました。